マドプロ・・・正式には『マドリッド協定議定書(マドリッドプロトコール)』といいます。
2015年12月現在の加盟国(締約国)は97ヶ国に達しており、その中から商標権を取得したい国を指定して1つの国際出願を行う事によって「複数国へ出願するのと同等の効果」を得ることができるという非常に便利な制度です。
マドプロを利用することによって、各国に直接出願する場合と比べて、「審査手続のスピード化」や「経費節約」更には「権利化後の管理の利便性」など数多くのメリットが存在します。
2015年 12月現在の加盟国は97ヶ国です。詳細は下記特許庁ホームページをご覧下さい。
http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/tetuzuki/t_shouhyou/kokusai/madopro_kamei.htm
加盟を検討している国も多く(特にASEAN諸国)、今後益々便利な制度になることが予想されます。
実際にマドプロを利用した出願も年々増加傾向にあり、特に海外事業を展開する上で重要な国の多くはマドプロに加盟しています。
マドプロを利用して国際出願を行うためには、我が国(日本)において、その基礎となる「商標登録出願」若しくは「商標登録」が必要となります。
出願中のものは『基礎出願』、既に登録されている場合は『基礎登録』(以下まとめて「基礎」という。)といいます。
商標(マーク)が同一であること。基礎となる商標(マーク)と厳格な同一性が求められます。
縦書き横書きの相違、文字フォントの相違、色彩のみの相違であっても同一とは認められません。
マドプロ出願で指定する商品・役務の全てが、基礎で指定している商品・役務の『範囲内』(完全一致含む)であること。
マドプロ出願を行う時点で、基礎の名義人との『完全同一』が求められます。
※出願後に名義人を変更することは可能です(その結果名義が同一でなくなってしまっても問題ありません)。
マドプロを利用する一番のメリットは『経費節約』です。
各国に直接出願する場合は、それぞれの国の代理人を介して手続を行う必要があるため不可避的に「現地代理人費用」が必要となりますが、マドプロ出願の場合は現地代理人を選任することなく手続可能となっています。※1。
また、各国の言語に翻訳する必要もないので、翻訳料も原則必要ありません。
※1 但し、各国の審査の結果、「登録を拒絶する旨の通知」が通知された場合に、その通知に対応する場合には現地代理人を選任する必要があり、それに伴って「現地代理人費用」や「翻訳料」が発生する場合があります。
マドプロ出願の場合、各国は審査期間が原則18ヶ月以内に制限されます(マドリッド協定議定書第5条)。
よって出願してから遅くとも18ヶ月後にはその国での権利発生の有無を確認することができます。
一方直接出願した場合、各国はそのような制限を受けないため、審査結果が通知されるまでより長い期間を要する場合があります。
各国に直接出願した場合、それぞれ別個の登録として維持管理する必要があります。更に通常は異なる日に登録されるので、権利の存続期間なども各国毎にバラバラとなるため管理作業が煩雑となります。
一方マドプロ出願の場合は、国際登録だけを維持管理することによって指定国全ての権利を更新し続けることができるため、手続きの一元化と共に維持管理費用を相当程度軽減することができます。
マドプロ出願では『事後指定』という手続きによって、初期段階には指定していなかった国や新規加盟国を追加し、保護の拡張を図ることが可能となっています。もちろん追加した指定国においても、国際登録を一元管理することで維持することができます。
マドプロを利用すれば、事業の進展によって他の外国で商標権を取得する必要性が生じた場合においても臨機応変に対応することができます。これとは逆に不必要となった部分についてのみ権利を放棄して維持費用を更に節約することも簡単です。
上記のようにマドプロは大変便利な制度ですが、マドプロに加盟していない国については利用することができません。マドプロ非加盟国のうち、日本企業にとって事実上問題となりそうな国は下記の通りです(2015年12月現在)。
下記の国で商標権を取得する場合には直接出願するしか方法がありません。
カナダ、台湾、香港・マカオ、インドネシア、タイ、マレーシア、ブルネイ、ミャンマー
※赤字のASEAN諸国においては、2016年を目途にマドプロに加盟することを目標に調整が進んでいる模様です。
詳細は ASEAN IP Portal(http://www.aseanip.org/)
※カナダについてもマドプロ制度に加入する動きが加速している模様です(2015年6月現在 WIPO日本事務局からの情報)
「セントラルアタック」とは、国際登録日から5年を経過するまでの間に、基礎となる出願が拒絶されたり、基礎となる登録が無効となった場合には、国際登録も自動的に取り消されてしまうというルールです(マドリッド協定議定書第6条)。
よって、できる限り早い段階で基礎となる国内出願の登録を確認してからマドプロ出願を行うのが安心です。